預貯金の名義変更
被相続人の死亡を銀行などの金融機関が確認すると、預金の支払いが凍結され、相続人が預金を勝手に引き出すことができなくなりますが、相続発生後は何かとお金がかかるので、一刻も早く名義変更もしくは解約手続きをとりたいものです。 しかしながら、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本の他、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明を不備なく取り寄せるのは大変なことですし、遺産分割協議書をまとめることは、初めての方には困難なものです。 更には、金融機関によって書類の書式が異なる上、その手順に差があったりと、一度で済むことは少なく、ご子息の方に、平日仕事を休んで手続きをしてもらう場合などはとても煩わしいものです。 |
ご自分で手続きされるための具体的な手続きも以下に記載しておきます。
目次
遺産分割協議書の作成
凍結された預貯金の払い戻しができるようにするためには、遺産分割協議書を作成する必要があります。
ほとんどのケースは預貯金だけでなく、不動産なども発生することがあるので、しっかり遺産分割協議書を作成する必要があります。
また、亡くなった人と、相続人全ての戸籍を集める必要があり、これらは煩雑な手続になります。
遺産分割協議書を作成する上では戸籍を収集し、相続人を確定するという作業が必須です。
※遺産分割協議書の詳細については、本ホームページの遺産分割協議書をご覧下さい。
遺産分割前の仮払い
亡くなった人の病院にかかった費用や葬儀費用の支払いなど、相続人が急いで仮払いを受けたい場合、遺産分割が正式に設定する前に必要な手続きをすることで、相続人が単独で、被相続人の預貯金から払い戻しを受けることができます。
具体的な手続きを確認しましょう。
金融機関の窓口で手続きを行う場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
なお、相続人が単独で金融機関から直接仮払いを受けることのできる金額は、次の算式で求めます。
相続開始時の預貯金の額×1/3×相続人の法定相続分
ただし、一つの金融機関から払い戻しが受けられるのは150万円までです。
提出書類 | |
1 | 金融機関所定の払い戻し請求書 |
2 | 相続人全員の印鑑証明書 |
3 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 |
※その他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
家庭裁判所に申立てを行う場合
相続人は、他の相続人の同意をもらうことなく、単独で家庭裁判所の保全処分によって、預貯金の仮払いをを受けることができます。
金融機関で直接手続きを行う場合と比較して手続きに時間がかかるため、緊急の支払いに利用するのは不向きです。
また、裁判所に申し立てる際には保全処分の申立書を書くなど、自分ですべてを行うことは難しいと言わざるを得ません。
そのため、専門家に依頼して行う必要があり、費用も多くかかってしまいます。
一方で、家庭裁判所に申立てを行う場合は、金融機関の窓口で手続きを行う場合に比べて多くの仮払いを受けることができます。
家庭裁判所に申立てを行う場合は、法律や裁判の専門家に相談することを推奨します。
遺産分割を済ませた後
遺産分割をどのように済ませたかにより、手続きは異なりますので事前にしっかりおさえておきましょう。
遺産分割協議に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
提出書類 | |
1 | 金融機関所定の払い戻し請求書 |
2 | 相続人全員の印鑑証明書 |
3 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 |
4 | 各相続人の現在の戸籍謄本 |
5 | 被相続人の預金通帳と届出印 |
6 | 遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印) |
※その他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
調停・審判に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
提出書類 | |
1 | 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本 (いずれも家庭裁判所で発行を受けることができます) |
2 | 預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書 |
3 | 被相続人の預金通帳と届出印 |
※その他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
遺言書に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
提出書類 | |
1 | 遺言書 |
2 | 被相続人の除籍謄本 (最後の本籍の市区町村役場で取得できます。) |
3 | 遺言によって財産をもらう人の印鑑証明書 |
4 | 被相続人の預金通帳と届出印 |
※その他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
以上が主な手続の方法ですが、これらの名義変更は煩雑な手続ですので、間違いのないよう一度専門家に相談することを推奨します。